ブレーキパッドとは

車のブレーキを支える重要なパーツです。

摩擦係数について

ブレーキパッドにとって重要な評価要素の一つに「摩擦係数」があります。摩擦係数とは2つの物体が接している面の摩擦度合いを表すもので、数字が低いほど摩擦が少なく(滑りやすい状態)数字が高いほど摩擦が大きい(滑りにくい)という事を意味します。摩擦係数が1の状態とは、ある物体(自重100kgとする)を水平方向に引っ張りそれが動き出すのに必要な力が100kg(物体の自重と同じ)だったという事で、この場合物体と路面の摩擦係数が1であったといえます。50kgで動き出した場合、その物体と路面の摩擦係数は0.5となります。車輌のブレーキの場合、1制動中に発生した制動トルク(減速G)と、そのトルクを発生させる為に必要であった液圧(踏力)から算出され、以下の公式で計算されます。
通常、ノーマルパッドでだいたい0.3~0.4、スポーツパッドでは0.4~0.5の物が、一般的であります。摩擦係数が高いと、少ない液圧(軽い踏力)でより多くのブレーキングエネルギーを発生させることができます。逆に摩擦係数が高すぎるといわゆるカックンブレーキになり、扱いづらくなってしまいます。摩擦係数にとって大事なことは、まず第一にブレーキを踏んでからそのブレーキパッドがもつ最大摩擦係数値に至るまでどれだけ早く立ち上がれるか、という点。これが悪いとブレーキを踏んでもなかなか効かないパッドということになります。(一般的に初期制動が悪いという表現になります。)第二に、温度によって左右されないこと。これも大事です。普通は低温時と超高温時には摩擦係数が低下する傾向にありますが、低温時に摩擦係数が低いとストリート走行では十分な制動力が得られず、超高温時に低いとサーキットでのレース走行等で問題になります。いわゆるレース用とは高温時での性能に重点がおかれており、スタートからゴールまで安定してブレーキングできるものが良いとされています。第三にスピードの変化に対しても安定している事。60Km/hからのブレーキングで一定の摩擦係数が得られても180Km/hからのブレーキングで摩擦係数が不安定になるようなら非常に危険で市販は不可能となります。私どもブレーキパッドメーカーはいかなる状況下においても安定かつハイレベルの摩擦係数を発揮する材料の開発に日々努力しつづけております。最後に摩擦係数を高めたり、安定させたりする材質としてスチールファイバーや銅、グラスファイバー、ケブラー、カーボン、セラミック、チタン等が有名であり、これらを含めて様々な材質をいかに組み合わせるかというところが各ブレーキメーカーの腕の見せ所でもあります。

耐フェード性とは?

「耐フェード性」とは(1)フェードが始まるポイント(温度)がいかに高いレベルに設定されているか。(2)フェードする前とフェードした時の摩擦係数の変化(落ち幅)がいかに少ないか。これによって評価されます。フェード現象というものはブレーキパッドの摩擦材に含まれる樹脂類がある一定の温度を越えると気化し始め、そこから発生するガスがパッドとローターの間に膜を作り(パッドとローターを引き離そうとする作用が発生する)摩擦係数が極端に低下してしまう現象の事を意味します。
通常ノーマルパッドではフェードポイント(フェードが始まる温度)が300℃~350℃ぐらいに設定されているのに対し、スポーツパッドは400℃~700℃ぐらいになっています。(材質や用途によってフェードポイントは様々です)また、スポーツパッドはフェード率(フェードする前とフェードした時の摩擦係数の変化を表す数値、フェードする前の摩擦係数を100%としてフェードした時の摩擦係数が何%になっているかを表すもの)を極力高めており、たとえフェードが始まったとしてもある一定の摩擦係数をキープするような設定になっています。通常ノーマルパッドではフェード率が40~50%に対し、スポーツパッドは60~80%ぐらいに設定されおり、フェードした時でもノーマルパッドのフェード前と同レベルの摩擦係数を維持するような造りになっています。フェードポイントやフェード率を高める為、私どもスポーツパッドメーカーは使用する樹脂類の成分やその含有量、又その他繊維質の材料の研究・開発に日々努力し続けております。

パッドの摩耗(減り)について

よく「スポーツパッドはノーマルパッドより減りが早い」と言われますが、これは正解でもあり、また間違いでもあるのです。その理由はブレーキパッドの摩耗(減り)がその使用温度によって大幅な違いが発生するからです。下記グラフに時速80Km/hから0.4Gのブレーキングを温度別に各1,000回行った場合の摩耗(減り)量をノーマルパッドとスポーツパッド(弊社M材およびZ材)で比較してみました。下記グラフでお判りの通り、パッドの摩耗は使用する温度に対して二次曲線的に比例し、高い温度域で使用すればするほどその摩耗は激しくなります。ノーマルパッドは、150℃以下での使用ではその摩耗が非常に少ないのに対し、300℃以上での使用ではスポーツパッドの倍以上摩耗することもあります。但し、ノーマルパッドは300℃以上になるとフェードが始まり、実質的には効力面で使用不可能なレベルに落ちるので、その温度域での激しい摩耗を体感するユーザーも少ないでしょう。スポーツパッドはワインディングやサーキットでよく使用される温度域(250℃~600℃)での摩耗を重視しているので低温域での摩耗はノーマルパッドより劣っています。結論的に一般道だけで使用の場合、「スポーツパッドはノーマルパッドより減りが早い」と言えますが、ワインディングやサーキットでの使用の場合はノーマルパッドより長持ちし、かつ安全なブレーキングができる優れものなのです。

パッドセンサーについて

パッドウェアインジケーターとも呼ばれ、パッドの摩耗限界を知らせてくれます。パッドに取り付けられた金属片がローターに接触して異音を発する機械式と、パッドに組み込まれた電線が切断されることでインパネにあるブレーキ警告ランプが点灯する電気式の2つがあります。 国産車の多くは機械式であり、一部の高級国産車と輸入車の多くが電気式を採用しております。なお、この電気式には差込み式と埋込み式の2つの方式があります。 まず、差込式ですが、こちらはベンツやBMWなどが採用している方式です。このタイプの特徴はセンサーを抜き差しすることが出来ます。
(低年式の車輌はセンサーが断線しておらず、警告灯が点灯していなければ再利用は可能でありましたが、高年式の車輌のセンサーは摩擦材の大部分 にさしかかり、摩擦材が十分にある段階でもローターと接触するようになっております。そして、その削れ量からパッドの残量を自動計測し、オドメーターの走行距離と合わせて計算され、交換時期が来た時に警告灯が点灯するような仕組みになっております。つまり、警告灯が点灯していなくても、一度削れたセンサーの再利用は不可能になります。)
次に埋込み式ですが、こちらはアウディやゴルフなどが採用している方式です。このタイプは製造段階で摩擦材にセンサーが埋込まれており、取り外しは不可能です。弊社のプレミアムパッド以外のパッドでも順次、この方式のセンサーに対応しております。(詳細は適合表をご確認下さい。)

埋込みタイプの処理方法について

純正品が埋込み式タイプのパッドである車にセンサー対応していないパッドを取り付けると、警告ランプが点灯したままになります。 そのままでも構わないのであれば問題ないですが、この警告灯ランプを解除するには次のような配線加工が必要となります。
◆配線加工の方法
取り外したパッドに付いているセンサーを摩擦材部分より切取る。
切り取ったセンサーの2本のコードを直結する。
センサーのカプラーを車体側カプラーに取り付ける。
ホイールなどに干渉しないようにセンサーコードを固定する。
この加工を行えば警告ランプは消えることがほとんどですが、車輌によっては ディーラー等でコンピューターのリセットが必要になる場合があります。
また、これらの加工を行う、行わないにかかわらずパッドの残量のチェックは目視になります。

ブレーキパッドのアタリ付けについて

■ストリートのみ使用の場合
組合わせるパッドや走行道路によっても異なりますが、一般道で大体300~1,000Kmほど必要になります。その間、急制動、急ハンドルなど急の付く運転は避けて下さい。また無理矢理、温度を上げるような走行もお控え下さい(ローターを歪める原因となります)。つまり、ごく普通の『安全運転』で走行頂ければ、ストリートでのあたり付けは完了致します。
■サーキットで使用する場合
新品のパッドやローターで、いきなりサーキットで全開使用すると急激な温度変化でローターにひずみやクラックが発生しやすくなります。そして、この歪みがジャダーの原因となります。新品ローターを初めてサーキットで使用する場合、最初の5分間は全開時の50%ぐらいの踏力でブレーキングを行ないながら走行し、一旦ピットイン。最低5分間くらいの冷却時間を空けて、その後10分間は70~80%の踏力でブレーキングを行なうよう心がけて走行し、再度ピットイン。もう一度10分間の冷却時間を空けて、次は80%から徐々に100%に近づけるブレーキングを行なうようにして頂ければ、サーキットでのあたり付けは完了致します。あたり付け完了後も十分なクーリングを行って下さい。クーリングを怠るとヒートスポットが出来る原因となります。
■イメージとしては・・・
「パッドの成分をローターに徐々に乗せる」イメージで、走行距離を重ねて下さい。 中古ローターに新品パッドを装着した場合は直前に使用していたパッドの成分がローター表面に付着しています。この古いパッドの成分を一度落とす必要がありますので、研磨を行わない場合は、パッドのあたりが付くまでい時間が掛かることがあります。また、組み合わせるパッドとローターによっては、アタリが付くまでジャダーが出る場合があります。

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