塗膜の厚さ(膜厚)とは?膜厚計で測ると分かること・分からないこと

更新日:2026/11/04 | 公開日:2026/11/04

板金塗装全般

塗装場で本塗りを終えた白いリアハッチ

中古車の販売店で、店員さんが小さな機械をボディに当てて回っているのを見たことはありますか。あるいは、車の査定や中古車選びを調べていて「膜厚計で測れば修理歴が分かる」という話に行き当たった方もいるはずです。

ただ、測ると数字が出るのは分かっても、その数字が何を意味しているのかまでは説明されないことがほとんどです。厚いと事故車なのか、薄いと危ないのか。測れば何でも分かるのか。そこが曖昧なままでは、せっかくの数字も判断に使えません。

板金塗装を扱っている立場から、塗膜の厚さとはそもそも何なのか、膜厚計で何が分かり何が分からないのかを整理します。中古車を選ぶときや自分の車を直すときの使い方もあわせてお伝えします。数字の目安を覚えるより、何と何を比べればよいかを知っておくほうが、実際の場面では役に立ちます。

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塗膜の厚さ(膜厚)は、ボディに重なった塗装の層をすべて足した厚み

車のボディは、色のついた塗料を1回塗っただけのものではありません。鋼板の上に、役割の違う塗料が何度も重ねられています。その重なり全体を「塗膜」と呼び、塗膜の厚さを縮めて「膜厚」と呼びます。

厚さといっても、指で触って分かるものではありません。紙よりもずっと薄い世界の話です。そのため目で見比べることはできず、測るには専用の道具が必要になります。

膜厚という言葉が出てくる場面は、大きく分けて2つです。1つは、中古車や査定の現場で「どこかを塗り直していないか」を調べるとき。もう1つは、磨きや修理の前に「あとどれくらい塗装が残っているか」を知りたいときです。どちらも、厚さそのものより「周りと比べて違うかどうか」を見ている点は共通しています。

新車の塗装は、下から順に役割の違う層でできている

板金塗装工場でバンパーを塗装する様子

工場で塗られる新車の塗装は、一般的に次のような順で重なっています。

  • 電着塗装:鋼板のすぐ上にあり、錆を防ぐ
  • 中塗り:面をならして、上の層が密着する土台をつくる
  • ベースコート:車の色を出す
  • クリア:一番外側で光沢を出し、下の層を守る

パール系の色では、色の層とパールの層を分けて塗るため、層がもう1つ増えます。この重ね方の違いが修理費にどう響くかは、3コートパールの層構造と修理費の記事で詳しく扱っています。

一番外側のクリア層がどんな仕事をしていて、なぜ劣化すると面でめくれるのかは、クリア塗装の役割と剥がれ方の記事にまとめました。下塗りの層の役割は上塗りと下塗りの違いの記事が参考になります。

膜厚計が測っているのは、この層の合計です。どの層がどれだけの厚みを持っているかを1枚ずつ分けて測るわけではありません。ここを押さえておくと、出てきた数字の読み方を間違えにくくなります。

新車の膜厚は「1つの正解」ではなく、車ごと・場所ごとに幅がある

「この車の膜厚の正常値はいくつか」と考えたくなりますが、実はそこに1つの答えはありません。同じ車種でも、メーカーや工場、塗装の色によって厚みに差があります。

1台の車の中でも差が出ます。塗料は平らな面には乗りやすく、角や縁には乗りにくい性質があるからです。ルーフやボンネットのような水平の面と、ドアのような縦の面でも、塗料の付き方は少し変わります。

年数がたった車は、さらに条件が加わります。屋外に置かれて紫外線を受け続けたクリア層や、何度も磨かれた面は、新車のころより薄くなっていることがあります。

そのため、膜厚を読むときは数字の大小を単独で見ません。見るのは次の2つの比較です。

  • 隣り合うパネル同士の比較(左のドアと右のドア、ドアとフェンダーなど)
  • 同じパネルの中での比較(中央と端、上と下など)

ほかと比べて1枚だけ、あるいは一部分だけ違う。この「ばらつき」こそが、膜厚から読み取れる情報の中心です。

膜厚計は、ボディに当てるだけで塗装の上から厚みを測る道具

膜厚計は、塗装を剥がさずに厚みを測るための道具です。測りたい場所にセンサーを当てると、下にある素材までの距離から塗膜の厚さを割り出します。

注意したいのは、下地の素材によって使える方式が違うことです。広く使われている方式は、鉄の鋼板やアルミのような金属の上の塗膜を測るためのものです。樹脂でできたバンパーなどは、同じ方式では測れません。樹脂の上を測るには別の方式の機器が必要になります。

測るときに気をつけたい点もあります。

  • 汚れや水滴が付いたまま当てると、数字がぶれやすい
  • 1か所だけ測って判断せず、1枚のパネルで何か所か測る
  • 角や縁はもともと薄めに出るので、平らな面と比べない
  • 機器ごとに誤差の出方が違うので、別の機器の数字と直接比べない

つまり膜厚計は、当てれば答えが出る機械というより「比べるための物差し」です。同じ道具で、同じ条件で、何か所も測ってはじめて意味のある差が見えてきます。

分かること1:周りより厚いパネルは、塗り直されている可能性が高い

膜厚計がいちばんよく使われるのは、再塗装の有無を調べる場面です。

板金塗装で傷を直すとき、多くの場合は元の塗装をすべて剥がさず、表面を整えたうえで上から塗り重ねます。下地を作り直す範囲は傷の深さで決まり、無傷の部分まで鋼板に戻すことはまずありません。結果として、塗り直したパネルは元の塗装の分だけ厚くなります。

たとえば左右のドアを測って、片側だけがはっきり厚く出たとします。その場合、厚い側のドアは過去に塗り直されている可能性が高いと読めます。同じパネルの中で、一部分だけ厚い場所がある場合も同じです。部分的に塗ったところと、元の塗装との境目に近い場所であることが多いからです。

塗り直しの跡は、目で見ても分かることがあります。色やツヤの差、表面のざらつき、境目の段差などです。目視での見分け方は板金塗装の跡を自分でチェックする7つの方法で順に説明しています。膜厚計は、目で見て怪しいと感じた場所を確かめる手段として使うと、役割がはっきりします。

分かること2:極端に厚い場所は、パテで形を戻している可能性がある

塗り直しによる厚みとは別に、ほかより飛び抜けて厚く出る場所があります。その場合は、へこみをパテで埋めて形を整えたあとに塗装している可能性があります。

パテはへこみを埋めるための材料で、板金塗装では普通に使われるものです。叩き出しで形を戻しきれない部分を、パテで平らにならしてから塗ります。そのぶん塗膜の下に層が増えるので、膜厚計では厚く出ます。

ただ、パテが入っていること自体は、悪い修理の証拠ではありません。小さなへこみを直すときには一般的な工程です。パテにどんな種類があり、どう使い分けるのかはパテの種類と使い分けの記事で解説しています。

パテが入っているかもしれない場所が見つかったら、知りたいのは「どの程度のへこみを直したのか」です。膜厚計の数字だけでは、そこまでは分かりません。

分かること3:周りより薄い場所は、磨きの余地が少なくなっている

膜厚計は、厚い場所だけでなく薄い場所も教えてくれます。周りより薄いところは、長年の紫外線でクリア層が減っていたり、何度か磨かれていたりする可能性があります。

磨きは、表面をわずかに削って細かい傷やくすみを取る作業です。削るので、磨くたびに塗膜は少しずつ薄くなります。もともと薄くなっている場所を強く磨くと、クリア層を突き抜けて色の層が出てしまうことがあります。

磨きでどれだけ削れるのか、どこで手を止めるべきかは磨きで塗装は薄くなるのかを解説した記事で扱っています。この記事では「薄い数字が出たら、磨きで済ませられる余地が少ないかもしれない」と覚えておけば十分です。

膜厚計で測っても分からないこと

膜厚計は便利な道具ですが、何でも分かるわけではありません。むしろ、分からないことを知っておくほうが判断を誤りにくくなります。

1. 塗り直した理由は分からない

厚いパネルが見つかっても、事故で直したのか、小さな擦り傷を直したのか、色あせを塗り直したのかは分かりません。数字が示すのは「塗り重ねた跡がある」ところまでです。

2. 骨格に損傷があったかどうかは分からない

中古車で言う「修復歴」は、車の骨格にあたる部分を直したかどうかで決まります。ドアやバンパーの表面を塗り直しただけでは、修復歴には当たりません。膜厚計が測るのは外板の塗装なので、骨格の損傷の有無までは測れないのです。修復歴に当たる部位と当たらない部位は修復歴の基準を一覧にした記事で確かめられます。

3. 修理の出来は分からない

厚みが周りとそろっていても、色が合っているか、境目がきれいかは別の話です。逆に、厚みに差があってもきちんと直っている修理はいくらでもあります。仕上がりは目で見て確かめるしかありません。

4. 樹脂のパーツは測れないことが多い

前の節で触れたとおり、バンパーなどの樹脂パーツは一般的な膜厚計では測れません。ところが、擦り傷の修理でいちばん多いのはバンパーです。「膜厚計で何も出なかったから無修理」とは言い切れない理由がここにあります。

中古車を選ぶときは「数字」より「数字の差を質問に変える」

中古車選びで膜厚の話を聞いたら、数字を合否の判定に使うより、販売店への質問のきっかけにするのがおすすめです。

  • 厚く出たパネルについて「ここは塗り直していますか」と聞く
  • 塗り直しているなら「どんな傷を直したのか」を聞く
  • 修復歴の記載と、塗り直しの場所が食い違っていないかを見る

塗り直しの跡があることは、それだけで避ける理由にはなりません。中古車の多くは、前のオーナーのもとで何かしらの傷を直されています。大事なのは、直した場所と理由が説明されていて、価格にも反映されているかどうかです。

買う前にボディのどこを見ておくとよいかは、中古車を買う前のボディのチェックリストで7か所に分けてまとめています。修復歴が査定や価格にどう影響するかは修復歴と査定額の関係を解説した記事を読んでみてください。

自分の車を直すときに、膜厚の考え方が関わってくる場面

ここまでは中古車を見る側の話でしたが、自分の車を直すときにも膜厚の考え方は関係してきます。

1. 磨きで済むか、塗り直しになるか

浅い擦り傷やくすみは、磨きで目立たなくできる場合があります。一方、塗膜がすでに薄くなっている場所や、クリア層を越えて色の層まで届いた傷は、塗り直しを考える段階です。どちらで直すかは、傷の深さと残っている塗装の状態を見て判断します。

2. 塗り直すと、そのパネルは周りより厚くなる

先ほど触れたように、塗り直したパネルは元の塗装の分だけ厚くなります。そのため、将来車を手放すときに膜厚計を当てられれば、塗り直したことは分かります。ただ、修復歴とは別のものであり、説明できる修理であれば過度に心配する必要はありません。修理と査定の関係は板金塗装と査定額の関係の記事で詳しく扱っています。

3. 色の合い方は、膜厚とは別に見る

修理で気になりやすいのは、厚みより色です。日焼けした周りの塗装と新しく塗った部分では、同じ色番号でも見え方に差が出ることがあります。色が合わなくなる理由と、気になったときの伝え方は板金塗装で色が合わない原因の記事にまとめています。

よくある質問

Q. 膜厚計はスマホのアプリで代わりになりますか?

なりません。膜厚計は、センサーで下地の金属までの距離を読み取る専用の測定器です。スマホの機能で塗膜の厚さを測ることはできません。

Q. 膜厚が厚く出た車は、事故車ということですか?

そうとは限りません。厚いのは塗り直した跡がある可能性を示しているだけで、小さな擦り傷を直した場合でも厚く出ます。事故で骨格まで損傷していたかどうかは、修復歴の記載や販売店への確認で判断します。

Q. 塗り直された車は、塗装が長持ちしないのですか?

下地を整えて正しい手順で塗られていれば、塗り直したことだけで極端に傷みやすくなるわけではありません。気になる場合は、境目のめくれや細かいひび割れが出ていないかを見ておくと安心です。

Q. 自分の車の塗装がどれくらい残っているか知りたいときは?

膜厚計で測るのが確実ですが、手元にない場合は、ツヤの引き方や角のツヤの違いから見当をつけます。磨く前に気になるときは、写真を送っていただければ、磨きで足りそうか塗り直しが必要かの見通しをお伝えします。

池内自動車の板金塗装について

池内自動車は、ボディの板金塗装に専門を絞っている修理チェーンです。全国36店舗で、年間39,000台以上の修理を扱っています。

修理内容ごとに料金を決めており、バンパーなど樹脂パーツのすり傷(10cm以内)は3,300円〜(税込)です。これはクリア塗装までの浅い傷が対象で、下地が見えている「えぐれ傷」は別料金になります。ドアやフェンダーなど鉄板パーツのすり傷は10cm以内で25,000円〜(税込)です。車種やボディカラーによる割増はありません。部位ごとの金額は料金表で確認できます。

パテと塗装は乾燥設備(ヒーター等)で焼き付け、色はテスト板で確かめてから塗ります。周りと色が合わないときは、ぼかし塗装で隣の面となじませます。仕上がりを限界まで追い込むために手間を積み上げるのではなく、しっかり直った状態に必要な工程を選ぶことで、早さと安さを両立しています。傷の状態によっては最短当日でお返しできます。

全店年中無休で、夜20時まで受け付けています。見積もりは写真を送るだけで、60秒ほどで依頼できます。回答は原則10分以内で、超えた場合は1,000円割引しています。見積もりのあとでお断りいただいても、費用はかかりません。

実際にどんな傷をどう直したのかは、修理事例の一覧でご覧いただけます。

まとめ:膜厚は「比べて読む」もの。迷ったら目で見て、人に聞く

膜厚の数字は、それだけで良い悪いが決まるものではありません。隣のパネルや同じパネルの別の場所と比べて、違うところがあるかを見る道具です。

中古車を見ているなら、厚く出た場所を販売店への質問に変えてください。自分の車の傷が気になっているなら、磨きで足りるのか塗り直しになるのかを、まず実物の状態から確かめるのが近道です。

どちらで直すのがよいか迷ったら、傷の部分を明るい場所で撮って無料見積もりを依頼してください。写真を見て、直し方と金額の見通しをお伝えします。

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読んだ内容で迷ったら、
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※バンパーのすり傷(10cm以内)3,300円〜(税込)/20cm以内 6,000円〜(税込)

監修者情報
株式会社イケウチ 技術部長 日守翔吾
株式会社イケウチ 技術部長
日守翔吾

大手中古車販売店で7年ほど経験を積んだ後、板金塗装に従事。工場長の経験を経て、2022年に株式会社イケウチに入社。豊富な経験を持ち、板金塗装を中心とした自動車修理業界に精通している。これまでに10,000台以上の車両修理を監修し、お客様からの信頼も厚い。

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